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15年戦争議論のひとつの成果(分岐点)

さんとの間で、あれこれやり取りしてきた15年戦争についての議論が、少しずつ、結晶化してきました。

15年戦争の間、日本は国の運営上、コントロールが効いていなかった部分があり、それが戦争の決断や、戦争終結の判断を鈍らせてしまった。コントロールが効かないのに戦争という大きな決断をしたことを「やむを得ない」と考えるか、「責任感希薄」と考えるかは、Xさんと僕との大きな判断の違いになっています。

コントロールが効かなかった理由は、憲法やその解釈上生じたもので、国のしくみの設計ミスとも言える。けれど、国のしくみは人間がつくるものであり、しくみの欠陥を放置したという問題はある。しかしそれを戦争指導者の責任にできるかは、議論がまだ分かれています。

このあたりは、合意できるのではないでしょうか。

で、コントロールについて、僕の意見を補足しておきます。

政府の長、総理大臣が、陸軍と海軍をコントロールできなかったというのは、Xさんとも合意できたとおり、憲法とその解釈上の制約でした。いわゆる統帥権干犯問題というのがあり、内閣は軍を管理できず、海軍、陸軍、内閣はそれぞれ独立した権力で、3権を管理できるのが天皇のみ、というしくみができあがってしまったわけです。これは構造上の欠陥であって、東条英機が総理大臣と陸軍大臣を兼務しても、海軍はコントロールできず、意思決定がうまくできなかった、というようなことからもわかります。

しかし、それ以前に、本来コントロール可能だった部分、たとえば陸軍大臣が、陸軍参謀本部をコントロールする、という部分も、コントロールが効いていなかったという事実があります。むしろ陸軍参謀が(自分たちのいいなりになるような人物を)陸軍大臣に決めたり、東京に陸軍参謀本部が、満州の関東軍をコントロールできずに、関東軍が勝手に動き、参謀本部があとから追認するということがしばしば起きている。海軍も同様です。

これでは、戦争という重要な判断を、戦略的に行うなどというのは夢のまた夢です。これが、昭和前期の日本の、大きな問題点です。その問題点によって、日本人も、アジア人も、多くの犠牲が出た。そういうミスを犯した戦前の指導者を、今を生きる僕らが尊敬すべきなのか、それが問われている。

中国も韓国も、日本を警戒しています。そのひとつの理由が、日本がかつて、コントロール不能に陥ったあげく、軍をアジア諸国に送ってしまったという経験があるからだと考えるべきでしょう。力はあるのに、それを十分コントロールする「頭脳」のほうが育っていない。そういう危なっかしい国だとみられている。

今に生きる僕らは、この点を見据えた上で、「あのときは確かにコントロールが効いていませんでした。それはこういう理由です」と示し、その上で、「これからはきっちりコントロールします、だいじょうぶです」と言わなければいけない。

でも、実際に起きていることは、そもそも、あの戦争の何が問題だったのかを考えようとしない、多くの日本人の存在です。僕ら自身が、あの戦争の問題点をきっちり確認することから始まる、と僕は考えています。そしてその意味で、今回のXさんとの議論はとても有意義でした。読むだけ読んでいただいた方も、ぜひあなたなりに、自分自身の頭で考えてもらえたらと思います。

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Comments

>そういうミスを犯した戦前の指導者を、今を生きる僕らが尊敬すべきなのか、それが問われている。

いや、私も別に尊敬しているというわけではありません。勢いそういう文章になってしまっていますが。彼らもある意味戦争犠牲者であり、一方的に戦争に送り込んだ側、という評価は不当である、といいたいのです。
無論戦地で死んだ一般兵士やその遺族の中に、東条をはじめとした指導者に反感を持つ方が出てくるのは仕方がないし当然なことだとも思っていますが。

>中国も韓国も、日本を警戒しています。

彼らは警戒していると言うより、「隣国の弱小化は自国の利益」という原理で動いている気がします。
また、大韓民国政府も中華人民共和国政府も、日本を非難することが国内の統制と現国家の正当性の主張につながることから、ことあるごとに日本に突っかかってきているふしがあります。
話がズレるので詳細は書きませんが、彼らの警戒に日本が責を追う必要はありません。韓国軍による日本漁船の拿捕人質戦略や竹島軍事占領の件を見ても、これは断言してかまわないのではないでしょうか。

>そしてその意味で、今回のXさんとの議論はとても有意義でした。

レスが遅くなりがちで申し訳ありませんでしたが、そういっていただけるとありがたいです。
あの戦争を否定したがる意見の方でここまで筋を通して反論してくる方はあまりいない気がします。こちらとしても大変勉強になり、またもう一度自分の意見を考え直してみるいい機会になりそうです。

もしかすると、より強い「肯定派」を生んだかもしれませんよ(笑

Posted by: X | October 10, 2005 at 01:17

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