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進化論に対抗し、神の「知的計画」

「ID」論というのを知ってますか? 神の知的計画、と訳されます。何のことやら、という感じだと思いますが、米国で、以前から、そしていま堂々と検討されている世界観です。

米国は科学の国と思われがちですが、ところがどっこい、とっても神学的、宗教的な国でもあります。何しろ大統領の就任には「神に向かって宣誓」があるし、そもそも建国したのは、イギリスにいた清教徒(ピューリタン)で、離婚を認めるなど堕落した英国国教会に嫌気がさし、本来のキリスト教徒たらんとした宗教心旺盛な人々が、新天地を求めて新大陸に渡り、建国したのが米国なのですね。資本主義の総本山の米国ですが、資本主義はキリスト教のプロテスタントから生まれた思想で、人間が禁欲的に労働し、それによって蓄積された富を神に捧げるという考え方から発展してきました。原理的に言えば、資本主義でもうけを出すことは神に仕えることで、米国はとっても神様と仲良しの国なのです。

口の悪い人は、資本主義は人間が持っていた富を資本の原理でかき集め、集めた富を神に捧げるシステムで、それ故に、資本主義が発展するほどに、神は豊かになり、人間は貧しくなる、という人もいます。まあこの話は現実に対してちょっと無理がある感じはありますが、一面の真実をとらえていると思います。

さて、そういう米国なので、米国にはキリスト教原理主義(原理主義はイスラムの特権ではありません)と言われる人たちがいて、いまのブッシュ政権は彼らが支持母体です。キリスト教原理主義の立場から見ると、ダーウィンの進化論はまったく許せない邪悪な説なのです。人間は下等生物から進化したとされますが、それでは神の意図はまったくなく、神が万物を創造したとか、人間だけが神に似せてつくられた特別な存在という聖書(特に旧約)の世界観とは矛盾しているのです。

で、米国では進化論を学校で教えるなという運動が以前からあり、実際に教えていないところもあるほどですが(万物は神に創造されたと教えているのかな)、ブッシュ政権下で勢いを増す原理主義者たちは、本格的にダーウィンの進化論を打ちのめすアイディアを考え出したわけです。これがID(知的計画)です。

進化は認めましょう、でも進化がいまのような進化の道をたどり、人間が生まれたのは、神があらかじめ計画していたのよ、というのがIDなのですが、もちろんその根拠はまったくありません。信仰です。それを学校で教えようという動きが起きていて、ブッシュ政権下なら実現しかねない勢いでしょう。

こういう動き自体を、神がかり的な非科学的な思想だと片付けることは、じつはできません。科学の知見の方が正しいと言うこと自体、信仰に近いし、しばしば「科学絶対視」「科学信仰」などと呼ばれて日本でも批判されます。科学がものすごく進歩すれば、地球のことも人間のことも、多くの問題が科学によって解決される、いま解決できないのは科学が未完成なせいだ、と考えるのも、根拠のない信仰に過ぎません。進化論も仮説に過ぎず、仮説を裏付けるものもあれば、矛盾するものもあります。しかし、多くの科学的な(生物学的な)知見が、進化論を支持しているのも事実です。

そもそも科学自体、教会で議論されてきたもので、ルネサンス初期の科学者(コペルニクスやガリレオなど)は、教会を批判しようと思った意図はまったくなく、神のことを知ろうとして研究していました。全知全能の神が天体をつくったのなら、恒星の動きと惑星の動きがこんなに矛盾するのはおかしい。恒星はきれいな円を描くのに、惑星は行きつ戻りつしたり、円を動かない。神がつくった運動はもっときれいに説明がつくはずだと考え、天動説の矛盾を克服し、シンプルに説明できる地動説に行き着きました。地動説こそ、神の意志を説明できるとコペルニクスもガリレオも考えたわけです。でも、それが、当時天動説を絶対視する教会の怒りに触れて、科学は教会の敵になった。教会の矛盾を暴露する、光を生む装置として理解された。これがルネサンスですね。でもここで注目すべきは、科学が照らし出したのは「カトリック教会の闇」であって、「キリスト教神学の闇」ではないのです。新教徒たち(ピューリタンを含む、宗教改革者=プロテスタント)は、カトリック教会は批判しても、科学が神の意志を明らかにする道具であることは、認めていたのです。科学は、いずれにせよ、神のことを知るための望遠鏡として機能してきたわけです。

そう考えると、ID論が出てくる理由がよくわかります。ダーウィンの進化論も、神のことをもっとよく見る(知る)ためのメガネだったはずなのに、かえって神を否定している。それは間違ったメガネだ、と考えることは自然なことです。目的が、神にあるのですから。

そんなわけで、ID論はいま米国の知識層や資本家層まで含めた賛同を獲得しつつあるのですね。もちろん、それはいくらなんでも強引すぎる仮説だ、いまさら神の意志を見いだすなどという目的は、前近代的に過ぎると考える人たちも、米国にもたくさんいます。でも米国は、そのような「米国人らしい(と僕らが考えそうな)」人たちだけの国ではないのです。

ちなみにキリスト教原理主義は、旧約聖書の万物創造を支持していることからもわかるとおり、キリスト教というより、ユダヤ教に近い。旧約聖書はもともとユダヤ教の聖典で、キリスト教はそのユダヤ教の宗教改革から生まれ、新約聖書を主な聖典、旧約聖書を従たる聖典を位置づけていますから。で、キリスト教原理主義者はユダヤ教原理主義にも近く、米国は伝統的にイスラエル支持、特に「ブッシュ政権は強いイスラエル支持という観点が生まれてくるわけです。

ふう~ざっくり書こうと思ったら、やっぱりけっこうたくさん書いてしまいました。駆け足だったので、わかりにくいところ、あれれ、間違えちゃった?ところもあるかもしれません、指摘していただければと思います。

▼元ネタ
進化論に対抗し、神の「知的計画」 米で影響力増すキリスト教原理主義

 ブッシュ米大統領が最近、キリスト教原理主義者らが唱える「知的計画(ID)」を、ダーウィンの進化論とともに公立学校で平等に教えるべきだと発言、波紋を呼んでいる。知的計画は、地球上の生命の誕生には、創造主の力が働いていたとするもので、多くの科学者が認知している進化論とは、大きく内容が食い違う。大統領の政権与党、共和党リーダーであるフリスト上院院内総務も、大統領を支援する形で、ID教育に賛成の意向を表明するなど、ID推進派の力が勢いを増す気配だ。(ベリタ通信=エレナ吉村) 
★詳細はサイトでお読みください。
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200509011401484

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Comments

わあ、長文お疲れさまでした。
実は私、小学校の頃、興味からカトリック教会(幼稚園を経営していた)に行っていたことがあります。
そのとき神父さんに「進化論を信じないの?」と訊いたら、「神様がああいうふうに進化させたんだと思うことにした」みたいなことをおっしゃいました。そういうふうに自分なりに解決させた、みたいなニュアンスだったので、「なんかずる~」と思ったのを覚えています。

私たちはどうも、科学と宗教とを対立するもののように考えていて、科学者は神様なんて信じていないと思いがちですが、確かに、現代の科学者にとっても、神は笑い飛ばせるものでは決してないようです。むしろ、神はいるのかどうか、神とは何か、が科学のテーマといってもよかったりして。
ホーキンス氏は、確か、「神は宇宙の始まり方を選ぶことは出来なかったと思われる」といっていたような。「神がこのように計画した」というのなら、神が望めばほかのようにもできたのでなければならない筈で、彼はそれを自身の研究の結果否定したんだと思いました。でもその内容はむずかしくて私にはわかりません。

Posted by: まきこ | September 06, 2005 at 14:53

実は・・以前からパコさんのブログをRSSリーダーに登録させていただいておりました。
うーん・・・このような議論を米国の御方とさせていただけるように・・・というのが理想なんですが・・・
なかなか、英語習得の道のりは遠いです。(笑)
とても、考えされる記事を、ありがとうございました。m(_ _)m

Posted by: Prowler7010 | September 06, 2005 at 19:12

まきこさん、毎度です(^_^)

「神はいるのかどうか、神とは何か、が科学のテーマといってもよかったりして。」

というのはまさにその通りですね。ルネサンスから近代の科学者、そして現代のある種の科学者は、科学は神の御心を理解する最も有効な方法だと考えてきたようです。

けっこう多面的な理解が必要なんですよね。

Posted by: paco | September 06, 2005 at 22:40

7010さん、こんにちは。

英語でこういう議論ができるといいですよねえ、僕にはとてもかないませんが、話を聞けたら、ぜひ紹介してください。IDの考えた方についてどう思う?とか聞けたらいいでしょうね。

またきてくださいませ。

Posted by: paco | September 06, 2005 at 22:41

横から失礼します。コメントへのコメントですが。

「そのとき神父さんに『進化論を信じないの?』と訊いたら、『神様がああいうふうに進化させたんだと思うことにした』みたいなことをおっしゃいました。そういうふうに自分なりに解決させた、みたいなニュアンスだったので、「なんかずる~」と思ったのを覚えています。」

確かにずるいですね。その神父は自分自身を騙していますね。キリスト教界には、保身のために自己欺瞞に陥っている人が多いですよ。

Posted by: 茶屋町 | September 10, 2005 at 12:42

茶屋町さん、こんちは。

神父さんの話、確かにずるいのですが、それが個人の良心の範囲なら、いいと思うのですよ。

今回の米国の件は、それを国家として子どもたちに教えるという点をどう考えるのか?ということです。

僕自身は、まだ判断がつきかねているんですけどね。

Posted by: paco | September 11, 2005 at 20:05

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