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家庭用燃料電池「1台50万円に」 エネ庁、量産へ支援

燃料電池は、自動車の実用化の話題が最近出てきませんが、家庭用の定置型の開発は着々と進んでいるようです。都市ガスを燃料とするタイプの場合、燃料電池とガスタービンとの競争になりそうですが、燃料電池のほうが効率はよいのではないでしょうか。

どちらも、基本は発電機で、都市ガス(天然ガス)、LPG、灯油などを燃料にして発電して、家庭に供給します。電力は家庭の使用量分程度になるような出力で700~1kwというのはおおむねそれに相当します。

ただ発電するだけでは、環境によいというわけではありません。どちらの方法でも、発電の際、廃熱が出ます。この廃熱でお湯を沸かし、家庭のキッチンや風呂で使えば、ガスや石油がもっているエネルギーの70~80%ほどを使い切ることができるようになり、いまのしくみよりエネルギーのムダがなくなります。発電の際に出る廃熱を、いかに無駄なく利用するかがキーになるわけです。この廃熱は70~90℃程度のお湯の形をとっているために、「温廃熱の有効利用のためのインフラ整備」がCO2削減の重要な切り札になる、ということになります。

さてこれらの発電+給湯装置による発電量は、常時一定なのに対して、家庭の使用量は常に上下しています。そこで、発電量が使用量を上回る時は電力会社に余った電気を売り、逆の時は電力会社から売ることで、年間平均すると、ほぼ電力を買わなくてもいいようにするというしくみです。つまり、電力会社との契約がいらなくなるわけではありません。

現在このしくみを使っているのは、屋根に太陽電池を設置している家庭で、電力会社は売電、買電ともに同額で行っています。このことからわかるのは、電力会社にとっては売る電気と買う電気が同じ価格では、実は電力会社は赤字だということです。自然エネルギーを増やすために、特別な措置としてこういうしくみでやっていると言えます。太陽電池を設置する家庭がまだそれほど多くないことも、許容範囲とみなされている理由でしょう。

しかし本格的に家庭用発電機が普及するとしたら、電力会社としてもこの方法は続けられません。何らかの価格設定が必要で、その時には、環境と経済性のバランスをどこに置くのかが、議論されることになるでしょう。電力会社が、ぎりぎりまで情報するとしたら、東京電力のコマーシャル「テプコの仕事のなかにはエコがあります」という言葉が、少し本物に近づくでしょう。

なお、燃料電池と小型ガスタービン発電機では、ガスのもつエネルギーに対する発電効率は、現状、大きな差はありません、というより、どちらも実用化直前の段階なので、実際に使った場合の効率が正確に読み切れていないという状況です。原理的には燃料電池のほうが効率がよいはずですが、じっさいにLCA(製品の開発から利用、廃棄までの総合効率)が、データをもとに確認されると、意外にガスタービンも健闘しそうな気がします。

▼asahi.comより──────────────────────────
家庭用燃料電池「1台50万円に」 エネ庁、量産へ支援
2005年09月24日09時26分

 電気と給湯をまかなえる家庭用の燃料電池を普及させようと、経済産業省資源エネルギー庁が本格支援に乗り出した。今年度から始めたモニター家庭での実証実験を広げるほか、耐久性能を大幅にのばす劣化対策や部品の共通化に向けた研究も始めた。省エネや温暖化対策にも役立つため、08年ごろからの大量生産の実現をめざしている。

 エネ庁は今年度、定置用燃料電池システム(家庭用燃料電池)の量産体制づくりと耐久性の検討を兼ねて、大規模実証実験を開始した。全国のガス、石油関連の計7社が、希望する個人住宅に400台設置する計画で、すでに半数に導入。今秋から残り分を受け付ける。発電出力は700ワット~1キロワット、60度程度のお湯をつくることができ、「エネルギー効率70%増」「CO2排出量3割減」と、ほぼ期待通りの結果が得られた。来年度はさらに600~700台の導入を図る。

 また、競争関係にあるメーカーを集め、(1)機器の劣化要因の情報を交換し、耐久性、信頼性を向上する(2)部品を共通化してコストを削減する、の2点について共同プロジェクトも立ち上げた。

 耐久性は3~5年程度までのびてきたが、プロジェクトでは10年をめざす。また、現在1台800万~1000万円程度のシステムを、部品を共通化して量産体制を整えることで、給湯器などと対抗できる50万円程度まで引き下げるのがねらいだ。

 エネ庁燃料電池推進室は「水素貯蔵など課題を抱える自動車に比べ、家庭用は技術的にほぼ確立している。信頼性と耐久性の向上が課題だが、実用化は見えてきた」と話している。

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