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小泉改革、破壊のあとに来るものは?

郵政民営化を巡ってついに解散。やってくれるじゃないの。
で、ネットをうろうろしていたら、興味深いコラムがふたつ。

ひとつは「新しい歴史をつくる会」=守旧派の総本山、西尾幹二のコラムで(pacolog!を読んでいただいてる方はおわかりと思いますが、僕とはまったく対極的な見解の持ち主、まあ、天敵のような感じですね)、

http://nishio.main.jp/blog/archives/2005/08/post_202.html
「国鉄からJRへの改革は成功したとみんな思っているが、巨大欠損は棚上げで、赤字鉄道の廃線で苦しんでいる地方の人は多数いる。英国の鉄道の民営化は失敗し、国営に戻った。郵便局の全国ネットワークの破壊を国民が恐れるのは、国鉄の例を見ているからである。巨額の公的資金をつぎこんだ長期信用銀行が外資にさらわれ、血税がドブに捨てられた事実を国民はみな知っている。郵政民営化のそもそもの要請がアメリカから来ていること、そこに警戒すべき謎があることも知られている。」

といい、小泉首相の行動を「乱心=精神病」と決めつけたあげく、
 
「江戸時代に「主君押込めの構造」というのがあったのをご存知だろうか。「殿、ご乱心」となれば座敷牢にとじこめ、家老重臣が合意で粛々と無血革命を行った。」

と来た。乱心だから閉じこめ、というのは要するに下克上を認めるということで、太平洋戦争が軍内部の下克上を大きな要因にして起こっていることは周知の事実。現在の日本は民主国家で、下克上を勧めるより、投票で決着をつけるのは当然。西尾幹児の頭の中は、今も明治憲法下にあるらしい。

乱心といえば、自衛隊のイラク派遣も乱心としかいいようがない。重大な憲法違反であり、憲法解釈のねじ曲げが起きているのに、この西尾一派は、イラク派遣の議論の時は「乱心」とは言わなかった。まあ、人は自分に都合が悪くなると、人を「狂った」と考えたがる。これは、僕が「考え方のつくり方」でして期した「議論を否定し、人格を否定しない」という態度ができていないことの典型例。西尾は他商品があるので、「あいつは精神異常者だ」という言い方をせず、「乱心」と言っているけれど、イラク戦争の前は「フセインは精神異常者」といって米国の戦争を支持した人がたくさんいることを僕は忘れない。

西尾は、「精神異常」を古風に「乱心」と言っているけれど、これはもしかしたら、本当にこの人が江戸時代か明治時代の感覚をそのまま保持していることを意味しているのかもしれません。こういう「元勲」みたいな人がつくった歴史の教科書を、信用してはいけません(が、杉並区でも半数の中学校がこの扶桑社の教科書を採用するということで、どういうメカニズムでこんなことが起こるのか、分析の必要がある)。

一方、立花隆の分析によれば、
http://nikkeibp.jp/style/biz/topic/tachibana/media/050811_kaigai/index.html
「郵貯が世界最大の貯蓄銀行で、それが民営化されたら、350兆円におよぶ郵政マネー(簡保も含めて)を持つ世界最大の銀行が生まれるということである。アメリカの関心は(政府も民間も)郵政民営化の問題で関心があるのは、この一点だけなのである。」

「日本の政治・経済・外交政策が一貫していかにアメリカの意志に従う形で展開されてきたかを例証してみせた。その後ずーっとたってから(20年以上たってから)、ほとんど同じような話を、外務省トップエリート出身の有力政治家から聞かされた。」

ということで、民営化の目的が、米国の意思の忠実な反映であるということは、西尾も立花も同じ立場。これはたぶん、正しいのだと思う。立花隆は、「破壊の跡に、どんな再生をするのか、小泉首相にはビジョンがない」と指摘しているが、ビジョンがないのは「イラク派兵」のときも同様、というか、靖国参拝も含めて、小泉という人にはビジョンと呼べるようなものはなく、(内政においては)単なる破壊者としての役割を担おうとしているのは、たぶん昔から変わらないのだと思う。立花の指摘は、「何をいまさら」という感じ。

ただ、郵政350兆円が外資の食い物にされ、国内の富が減るとみんな言うけれど、僕らのように利権を持たない庶民にとっては、日本人の中に食い物にしている連中がいるのと、それが「外資」に変わるのとは、どこが違うのか? いずれにせよ、利権(カネという力を恣意的に動かせる権利)を握れば、自分たちの都合のいいようにしかやらない。それが国内の利権団体(特殊法人?)なのか、外資なのか、いずれにせよ、庶民は食い物にされていることには代わりがないじゃないの。

郵政350兆円を利権として扱うことで、六兼屋の周辺にもきれいな道ができ、ぴかぴかの本ばかり並ぶ図書館が5000人の村にもでき、人の入らないフラワーパークができている。しかし、それらの半分のイニシャルコストと、それらを維持するランニングコストのすべては、経済力の乏しい田舎の住民の血税だ。そして税金をやっと納めた後に残った年金の残りを、またまた郵便局に預けている。利権屋さんに、まわり回って税金を取られるとも知らないで。

で、そんな郵便貯金なら、外資に買ってもらったって、関係ないじゃん、というのが、国民の民営化支持アップの意味なんじゃないだろうか。

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Comments

こんにちは。

首をひねることばかりです。
なぜ、国民は年金や社会保障制度を選挙の争点として重視し、郵政問題のポイントは低いというのに、コイズミ政権の支持率が上昇するのか。まさか噴飯モノのガリレイの例えが効いたのか。

郵政どころか年金や社会保障もぶっ壊して国の根幹もアメリカ市場や一部既得権益者の草刈場にしようとしているのが現内閣だと思います。国民も自分たちで手詰まり感を何とかしようとするのではなく、最後の最後まで他人任せで、甘い見通しと思い込みの皮相さをもって消極的支持をしている最たる状況が「いま」という時代だと思います。
かの大戦もこのような情勢で起きたのでしょうか。

たしかに利権をしゃぶるのが国内から外国にシフトするだけのことかもしれませんが、改革の中身を吟味することなく、耳通りのいい言葉に引かれて盲目的に支持しているとしか思えない国民意識と、してやったりと薄ら笑いを始終浮かべているコイズミを見ていると暗澹たる気持ちになってきます。

いま望まれるべきは郵政よりも、社会保障や年金を食いつぶした責任の所在を追及し、システムをおおっぴらに開示していくなかで見直しや改革を果たし、国民にわかりやすく説明することではないでしょうか。
その中で出てくるのならともかく、果たしもしないで郵政論議のみ先行とは、順番違いもはなはだしい。

造反組も造反組で、自分のポリシーよりも「自民党」という組織を優先する志向は一体なんなのだろう、と思います。

長くなりました。申し訳ありません。

Posted by: フレアー | August 15, 2005 at 13:44

コメント、ありがとうございます。
確かにその通りだと思います。
では、日本人が日本の国益を考えてものごとを決めるとしたら、それはどういうことなのか。そこが見えていないのでしょう。

すばらしい指導力を持った人物が政治のリーダーになれば、というイメージを持つ人が多いのですが、たぶんそれはずれています。小泉首相は、少なくとも何かをするという点では、それ以前の首相と比べて、「何かをやる」ということについては明確な姿勢をもっていたのは確かです。やったことや、やったことの隠れた目的、結果は、支持できないことが多いとしても。

かといって、官僚組織やシンクタンクのような、政策立案集団がつくったものを政治家がほとんど無条件に受け入れることがいいともいえない(これは米国流)。

北欧やドイツが、環境問題に取り組むときにとっている方法は、参考になると思います。コンセンサス会議という手法を核に据えながら、有志の市民と専門家、行政、政治家がひとつのテーブルについて、政策を立案、修正していくプロセスは、欧州の政治的な成熟を感じさせます。米国では、こういうやり方は「古い欧州」とか呼んで、手間がかかりすぎると考えがちですが、急いで納得感のない決断を下すことが結果的に愚かだということを、欧州の人々は知っているのでしょう。

断じて避けなければならないのは、小数の有力者が、超法規的にものごとを決めていく「家老政治」でしょう。このやり方は、うまくいくと集団指導体制と呼ばれ、賛美されたりしますが、たいていは密室政治などと呼ばれ、法的な権限さえ簡単に否定してしまう下克上的な状態を招きます。

意思決定システムが機能不全に陥っていることが、本質的な問題ではないでしょうか。

Posted by: paco | August 18, 2005 at 00:13

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