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フリーターによるモノづくりとグロバリゼーション

NHKスペシャル「フリーター漂流 ~モノづくりの現場で」を見ました。かなり衝撃的でした。

アルバイトや派遣が厳しい雇用条件の下で働いているのは知っていたのですが、この番組で紹介される「業務委託」によるアルバイトはかなりと過酷です。

業務請負業界については、情けないことに僕は情報にキャッチアップできていなかったのですが、要するに業務請負会社が製造業などと請負契約を結ぶことからはじまります。業務は単純でおおよそ誰にでもできるもので、携帯電話の組み立てや基盤のレジスト塗りなどが紹介されていました。根気とていねいさ、それにスピードが要求される仕事です。

業務請負会社はフリーターを時給900円で雇用し、委託先の工場に連れて行って、工場内で組み立てなどの作業をさせ、時給を払うのですが、仕事を出している工場(メーカー)は、あくまで業務を委託しているだけなので、業務がなくなれば当日仕事がはじまっていても、午後からは仕事打ち切りということができます。アルバイターを雇っていれば、雇用になるので、従業員の処遇の変更をする場合は一定の制約がありますが、業務委託=請負では、あくまで業務なので、配置転換や仕事をなくすことにはいっさいの制約がありません。双方が合意すればいいだけです。

そのため、フリーターたちは、文字通り歯車のように右から左に配置先を変えられてしまいます。フリーターはあくまでも請負会社と雇用契約を結んでいるだけで、請負会社は仕事を保障しているだけで仕事の場所までは保障していないというしくみのようです。請負会社は、工場のどこかのラインでの仕事は保障しますが、いくらバイトの仕事でも、その人なりに作業習熟にがんばったという実績は完全に無視され、「また新鮮な気持ちで新しい仕事をしてください」と、今度はまったく別の製品の組み立てに回されるのです。もともとそれほど習熟のいる仕事ではないので、配置転換によって技能が失われるというようなリスクはないのですが、必死に覚えた個人の努力は無視され、覚えても何も身に付かないという意味で、不毛な時間を過ごすことになり、消耗していくのです。

その扱いは、懐かしいチャーリー・チャップリンのモダンタイムス以上の非人間的な状況で、時間にルーズな彼らは、寮に入り、請負会社のワゴン車が迎えに来て、寝坊する権利さえないという感じです。夜も残業があり、工場があるのは町から遠い地域で、彼らはクルマを買う余裕もないために、結局請負会社のワゴン車が唯一の移動手段になり、寮と工場の往復しかない生活、という状況になるわけです。これはていのいい現代の奴隷、ですね。より高いレベルの仕事をしていく意欲もなく、仕事の階段を上っていくという考えさえ教えてもらっておらず、過酷な環境にガマンしなければ仕事がなくなるのみという状況にいます。

僕の友人が、転職の合間にしばらくフリーターをやって、ファストフード店で働くアルバイターたちの従順さと、こき使う会社の問題を指摘してくれたことがあります。友人は「アルバイターはやっぱりひどすぎる、正社員にならないと」と言っていて、僕は「正社員になったからといって搾取の状況は変わらない」と言ったことがあります。今でもそれは事実だと思うのですが、同じアルバイターでも、請負会社があいだにはいるアルバイトは、いくら何でもひどすぎる。ファーストフード店でなら、アルバイターから抜けでる可能性がまだ開けていて(バイトリーダーや副店長などになり、マネジメントノウハウを身につけてから、転職するなど)、それはそれでひとつのキャリアだろうと思うのですが、業務請負に雇われるアルバイトはそういう道さえ残っていない。というのは、工場と調節契約していないので、バイトリーダーになっても、その功績を工場が認める可能性がほとんどないのですね。つまり構造的にずっと作業人か、または認められる可能性のほとんどない、時給の変らないバイトリーダーとして仕事をし続けるしかない、という点で、実質的に奴隷状態といってもいいのではないかと感じました。

でも一番むっとしたのは、こういうバイトの使い方をしながら、「フリーターはもっともっとほしい、どんどん工場に送り込む」と言っている請負会社の経営者で、ここまで来ると悪魔的です。フリーター世代が10年後、日本の主力となる働き手であることに、目を向けようとしていない。

日本の工業製品がこういう労働力に支えられるとしたら、それで国際競争力がついたとして、いいことなのかと考える必要があると思うのですが、間違いなく言えるのは、日本も米国のように、中間所得層が没落し、貧富の差が激しく広がりつつあるのは、紛れもない事実です。これが、グロバリゼーションの「意味」なのですね。

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Comments

私もこの番組に同年代として非常に興味がありましたが、残念ながら見ることができませんでした。しかし、パコさんのわかりやすい解説のおかげで番組の本質だけは理解できました。
来年からフリーターという友人もいますので、大学にもどったら意見を聞いてみたいです。

今は大学に戻っておりますが、2月の末には就職活動で東京にもどります。その際には、再び宜しくお願い致します。

Posted by: 渡津 拓郎 | February 09, 2005 at 02:14

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Tracked on February 06, 2005 at 01:53

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