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書評「アメリカの内戦」

ブッシュ政権批判についての本はかなり出ているが、この本は見ている視点・独自の情報源で異色。内容が正しいかどうかは僕には判断しきれないのだけれど、僕は十分納得感を感じられた。
通常、ブッシュ政権の問題点を、「ネオコンに乗っ取られた」という視点で書いているものが多いが、この本は「ネオコンは思想面を強化するためにあとからつぎはぎされた<頭脳>に過ぎず、情緒や指向性の面では、<アメリカ南部・テキサス西部>の保守的な<キリスト教原理主義>のものだと指摘する。
キリスト教原理主義についてはあちこちで指摘はあったのだが、明確にその姿を描いた本は少なく、この本はわかりやすい。ざっくりとようやくすれば、米国南部~テキサス西部の住民に広まっているキリスト教原理主義とは、通常のプロテスタントのように新約聖書に回帰するのではなく、旧約聖書にまで回帰してしまう過激なものだという。新約聖書は「愛の神」をとくイエスの物語だが、旧約聖書はイエス以前のユダヤの民族物語で、読んだことがある人はわかるが、旧約聖書の神は「息子をいけにえに差し出せ」というようなことを言ってくる厳しい神だ。イエスの宗教革命は、ユダヤ教のこういう厳しい部分を「愛の神」というコンセプトでドラスティックに変更したことにある。
南部~テキサス西部のキリスト教原理主義は、こういう旧約の(ユダヤ教の)神に帰依する思想で、イエスの「愛の神」(右ほほを打たれれば、左ほほを差し出せ)という思想を「生ぬるい」と否定する。この旧約思想をベースにしているが故に、ブッシュJr.政権は世界でイスラエルだけを盟友にしているわけだ。
こういった旧約聖書原理主義に帰依することで、現在も自らを選民として神に選ばれ、他民族を支配する義務を与えられたものと自認し、人種差別、搾取を当然とする考え方を生む。
日本人は米国では1867年の南北戦争で米国の奴隷制度や人種差別は終わったかのような感覚を持っているが、実際のところ、南北戦争は制度上の奴隷制度が終わっただけで、人種差別が実際に社会的に否定されるようになったのは1960年代の公民権革命(マルチン・ルーサー・キング牧師らの)になってようやく、主に北部、西部で実現されたものに過ぎないと指摘する。南部~テキサス西部では公民権革命は災厄だとしか理解されておらず、白人至上主義と異民族の搾取は神から与えられた使命だと考えているらしい。彼らにとっては民主主義という言葉も、限定された白人だけを母集団とするものだと理解されている。
J・F・ケネディやクリントンに象徴されるような米国の民主的なリベラル思想は、米国内ではひとつの主流に過ぎず、その一方でまったく異質の白人至上主義が今もしっかり基盤を持っているらしい。この状態を著者は「あめりかの内戦」と表現している。
実際のところ、キリスト教原理主義の思想を持つ人々は米国の人口では少数派なのだが、選挙制度の問題(日本でも問題になる、定数配分の問題)と、無党派層が投票に行かないといった理由で、ブッシュのような保守反動思想を持つ人物が大統領になってしまうのだというのだ。ちなみにブッシュ家は父の代に北東部からテキサスに移住してきており、父は比較的リベラル、南部で育った息子の現ブッシュ大統領はバリバリの人種差別主義者だというわけ。
ちなみにブッシュの主な支持基盤は学歴が低い労働者や農民階級で、情緒的な支持に留まるために、ネオコンの思想を持ってきてつぎはぎした(フランケンシュタイン手術と著者は呼ぶ)ことで、幅広い支持の獲得に成功したというのが著者の分析になる。
僕は米国南部のメンタリティというのがうまく想像できないので、この説が正しいかどうかわからないが、もしこれが正しいとすれば、ブッシュ政権の行動は確かにクリアに説明がつくのは事実で、さらに言えば、この先、ブッシュが再選されれば、世界に及ぼす災厄は想像を絶する。絶対に再選させてはならないと著者は同郷のテキサス人として強く主張しているが、その大統領選は、秋から本格化する。
アメリカの内戦

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